出張する際には、交通費や宿泊費以外にも現地での食事代といった雑費もかかります。
この雑費部分をカバーするために一定の要件を満たして出張日当を支給すると、会社にとっても、従業員にとってもメリットがあります。
この記事では、節税対策として活用できると同時に従業員のモチベーションアップも図れる出張日当についてご紹介します。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
出張日当とは
出張日当とは、従業員や経営者が業務のために出張する際、交通費・宿泊料以外の諸雑費として支給される手当のことです。具体的には、出張先での食事代や移動中の雑費、通信費など、出張中の業務に必要となる細かい費用をカバーするために支給されます。出張日当は、実際にかかった費用に関わらず、一定額が支給されるため、領収書の提出などの細かい記録が不要な点が特徴です。
出張にかかる経費としては、一般的には以下のものが挙げられます。
1.交通費
出張先への移動に必要な費用。飛行機や電車、バス、タクシーなどの公共交通機関の利用にかかる費用が該当します。自家用車を使用する場合は、ガソリン代や駐車料金、高速道路料金なども含まれます。交通費は実費精算することが多いです。
2.宿泊費
出張先で宿泊する際に発生する費用。ビジネスホテルや旅館の料金が一般的で、宿泊費は出張の目的や日数に応じて変動します。宿泊費は実費精算することが多いです。
3.出張日当
上記の交通費や宿泊費とは別に支給される出張にかかわる諸雑費として支給されるものです。一般的には実費精算せず旅費規定に従って定額支給されます。
出張日当のメリットとデメリット
出張日当を支給する場合のでメリットとデメリットは以下のとおりです。
出張日当のメリット
- 税金が増えない
出張日当は、出張旅費規定を整備し適切に運用することで、一定の条件下で所得税の対象外となります。これにより、給与として課税されることなく従業員に手当を支給でき、従業員にとって所得税の負担が軽減されます。 - 社会保険料が増えない
役員や従業員に支給される出張日当は、社会保険料算定上の「賃金」には含まれません。 そのため、出張日当の支給により社会保険料は増加しません。そのため、会社と従業員の両方にメリットがあります。 - 従業員のモチベーション向上
出張に伴う個人的な支出を補填することで、従業員の負担が軽減され、出張への意欲や業務効率が高まる可能性があります。経済的な不安を取り除くことで、より快適に出張業務に集中できる環境を整えられます。 - 実費精算が不要
出張日当は、旅費規定に従って一定額を支給するため、実費精算が不要となります。そのため、実費精算にかかる手間が省けるため事務作業が効率化できます。
出張日当のデメリット
- 出張旅費規定が必要
出張日当を支給するためには出張旅費規程が必要となります。
出張旅費規定が不整備であったり、日当の支給が明確な基準に基づかない場合、または一般的な相場に比べて高額である場合には、日当が給与とみなされ所得税の課税対象となるリスクがあります。規定をしっかり整備し、正当な運用が求められます。 - 出張が多い場合はコストが増える
出張が頻繁にある企業では、日当を多く支給することで、会社のコストが膨らむ可能性があります。頻繁な出張に対して日当を支給する際は、適切な予算管理が必要です。
これらのメリットとデメリットを踏まえ、出張日当を導入・運用する際には、企業の経費管理方針や従業員の働き方に合った形で制度を設けることが大切です。
具体的な運用方法
出張日当を支給するためには出張旅費規程を作成し、その通りに運用する必要があります。 運用にあたっては下記の点に気を付けましょう。
- 旅費支給の明確化
出張旅費規程では、支給する範囲や基準を明確に定める必要があります。交通費、宿泊費、出張日当など、支給する内容を具体的に示し、どのような場合に支給されるかを明確に規定します。また、具体的な金額や上限を定めておくことで、支給基準が公平で透明性があるものになります。特に支給対象者は役員、従業員の全員とし、その職位などから見てバランスよく設定されていることが必要です - 税務面での適正性の確保
税務上、出張旅費や出張日当の支給には国税庁の定める「通常必要な範囲」の金額を守ることが重要です。(所得税基本通達9-3(非課税とされる旅費の範囲)
なお、通常必要な範囲の出張日当の金額は、具体的に示されてはいませんが、常識的な金額であることが必要となります。出張手当の具体的な相場は多くても5000円程度のようです。( 出典 産労総合研究所「2019年度国内・海外出張旅費に関する調査」) - 実施方法と運用の明確化
出張旅費規程は実際に運用されることが大切です。出張の申請方法や精算手続きの流れを具体的に定め、規程に従って手続きできるようなフローを作るとよいでしょう。例えば、出張終了後は、「出張精算書」等の提出を義務づけ、出張精算書には、「出張日時」「目的地」「訪問先や相手方の氏名」「業務の内容」などを記載し、宿泊費や交通費の領収証を貼付しておくと良いでしょう。
出張日当を支給する際の注意点
出張日当を支給するにあたっては下記の点に注意しましょう。
- 高額な出張日当は給与課税される可能性がある
高額な出張日当を支給すると、給与課税される可能性があります。
役員・従業員に高額な出張日当を支給し、給与課税された場合には、所得税・住民税の負担が増えてしまいます。また、社会保険料も増加する可能性があります。
特に役員に対して出張日当を支給した場合には、法人税の計算上、役員報酬は毎月定額である必要があるため、出張日当は経費に計上できない場合があります。そのため法人税の負担も増得る可能性があります。 - 出張の証拠書類は残しておく
カラ出張でないことを証明するために出張の証拠書類を残しておきましょう。
なお、インボイスの特例(出張旅費規程の特例)により消費税の計算上は、帳簿記載のみでインボイスは不要となります。しかし、出張があったことを何も証明するものがないとカラ出張でないかとあらぬ疑いをかけられることがありますので、出張を証明するためには報告書や請求書・領収書をしっかりと備えておく必要があります。
まとめ
出張日当について説明しました。
出張日当とは、出張先での食事代などの交通費や宿泊費以外の雑費を補填するために支給されます。出張日当は適切なルールにのっとって支給すると、会社と従業員の両方にメリットがあります。会社側では、実費精算とは異なり、出張旅費規定に従って一定額を支給すればよいため 精算手続が簡素化され業務の効率化が図れます。また従業員側では、出張日当は給与に該当しないため、支給されても所得税・住民税や社会保険料の負担は増えません。そのため、従業員のモチベーションアップにつながるでしょう。出張日当を支給するためには、まずは出張旅費規程を会社に備える必要があります。出張日当の支給に関心がある方はぜひ弊所までお問い合わせください。